ナチス占領下、フランス・ピレネー山脈の麓の小さな村で起きた奇跡の物語。
1942年、第二次世界大戦さなかのフランス。ピレネー山脈の麓の小さな村に住む羊飼いの少年・ジョーは、平和な日常を送っていた。しかしある日、ナチスの迫害から逃れてきたユダヤ人・ベンジャミンと知り合い、ユダヤ人の子供たちを山の向こうのスペインに逃す救出作戦に協力することになる。そんな中、ついにのどかな村にもナチスがやって来た。村人たちを巻き込んだ作戦のゆくえは―。
ジョーは父親や祖父、ユダヤ人、ドイツ兵らとのかかわりの中で様々な気づきを得て、世界を広げる。少年は、戦時下での思いもよらぬ出来事を経験しながら、大人へと一歩ずつ近づいていくのだ―。人種差別や迫害を描いた従来のナチス映画とは趣の異なる、生きることの素晴らしさと希望を描いた異色の映画が誕生した。
主役のジョー役は、Netflixテレビドラマシリーズ「ストレンジャー・シングス 未知の世界」で世界的に人気急上昇中のノア・シュナップが大抜擢され熱演した。彼の脇を固めるジャン・レノ、アンジェリカ・ヒューストンのベテラン2人が、ユダヤ人の子どもたちを救わなければいけないという重責と苦悩をいぶし銀の演技で表現している。ナチス・ドイツ将校の役に人間味を持ち込んだ演技を魅せたドイツの名優、トーマス・クレッチマンも印象に残る。
スピルバーグ監督により映画化された『戦火の馬』の原作者が贈る“希望の物語”。イギリス児童文学を代表する作家のマイケル・モーパーゴは、戦争を舞台に人間本来の姿やその本質を、市井の人々を通して問い続けてきた。原作「アーニャは、きっと来る」は1990年にイギリスで出版されて以来、世界中で慣れ親しまれている作品である。暗い歴史に焦点を当てるだけではなく、羊飼いの少年の成長を雄大なピレネーの自然を背景に描き、様々な視点からアプローチした意欲作と言える。少年は希望を捨てずにアーニャを待ち続ける――。