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本編

夜の鼓

夜の鼓

  • 95分 
  • 2日間 440 pt 〜

鳥取藩御納戸役小倉彦九郎(三國連太郎)は、主君と共に参勤交代で在京すること一年二カ月の後、懐かしの国許へ向かった。彦九郎は江戸での加増を、一刻も早く家で待っている愛妻のお種(有馬稲子)に知らせようと心をはやらせた。帰国してしばらくたつと、彦九郎は何か周囲の変な様子に感づいた。義兄の政山三五平(殿山泰司)をたずねるが、妹のおゆら(日高澄子)も、義母のお菊(毛利菊枝)も、口を濁して語ろうとしない。彦九郎はそこで伯父の黒川又左衛門(東野英治郎)のところに行った。又左衛門は苦い顔をしながらお種と鼓師宮地源右衛門(森雅之)の不義密通が、家中に知れわたっていることを告げた。彦九郎は家にもどってお種を激しく詮議したが、彼女の目には一点の影もなかった。何事もなかったという妻の申し開きに、彦九郎は安心するのだった。しかし人の噂は一向におさまらない。遂に又左衛門を中心に家族会議を開くことになった。それが終わったあと、問いつめる彦九郎に、お種は語った。彼女の実家での桃祭りの日、源右衛門を招いていた。酒を飲みすぎたお種は、以前から彼女にいい寄っている磯部床右衛門(金子信雄)をはねつけた。刃物でおどかす床右衛門の前に屈しかけた時、近づいた人影・源右衛門は現場の口封じと、彼女自身も酒の勢いで彼に身を任してしまった。一晩中お種を責めつづけた彦九郎も、朝になって落着きをとりもどした。妻の過ちを許そうと思いなおしたが、武家社会のしきたりはそうさせなかった。