『ザ・デクライン』(80)でアメリカン・パンクの生態を捉え、『反逆のパンク・ロック』(84)では社会から排除された孤児たちの儚い日常を切り取ったペネロープ・スフィーリス監督が、実在の連続殺人鬼の記事を目にしたことを動機に不安定な若者の苦い青春像を描き出した衝撃作。のちに大ヒットTVシリーズ「X-ファイル」を手掛けるグレン・モーガンとジェームズ・ウォンのコンビ初の脚本。プロデューサーのサンディ・ハワードは『ザ・モンスター』(82)、『エンジェル』(84)を手掛けており、本作含めてロサンゼルスの闇を描くという点で非常に芯があるように映るが、監督は後年進歩がないと苦笑した。ジョナサン・カプラン監督『レベルポイント』(78)や、テレンス・マリック監督『地獄の逃避行』(73)と比較され、誰もが抱える大人への成長の不安と殺人鬼の心理を描ききり、あからさまな共感を求めない淡々と絶望を綴る演出で高く評価された。主演は『処刑ライダー』(86)、『プラトーン』(86)、『ウォール街』(87)などでスター街道を突き進むこととなるチャーリー・シーンと、主演作『グリース2』(82)の大コケで干され気味だったマックスウェル・コールフィールド。主演二人の鬼気迫る演技と、ドキュメンタリー映画出身の監督ならではのリアルな描写と設定は、フィクションという枠を超えて人間の抱える本物の恐ろしさに満ちている。どこにでもいる普通の若者が些細なきっかけで破滅への道を辿ることとなる展開は如何にもリアルなもので、海外では本作はホラー映画を観るよりもはるかに恐ろしい映画体験と語る者が多い。監督は近年のインタビューにおいて本作の暴力描写を悔いており、本作を作らなければよかったとまで語っている。いまやアメリカ映画史上の傑作といわれる『地獄の逃避行』に主演したチャーリー・シーンの父、マーティン・シーンは本作の試写で途中退席した。『ブロークン・ジェネレーション』は公開当時も今も、変わらず観る者に現実に起こり得る恐怖を与える役割を果たしている。劇中にフィーチャーされた音楽はCODE BLUE、THE CRAMPS、GREAT WHITE、IGGY POPなど。