本作はイギリスを代表する女性監督サリー・ポッターの弟が、若年性認知症と診断され、監督自身が介護で寄り添った経験をもとに書き下ろされた物語。
父レオ役は圧倒的な存在感で観るものを引き付けて離さないオスカー俳優ハビエル・バルデム(『DUNE/デューン 砂の惑星』『ノーカントリー』)、娘モリー役をイノセントな魅力を放ちながらも確かな演技力で数多の実力派監督と組んできた人気女優エル・ファニング(「マレフィセント」シリーズ)が演じ、ついに父娘役で初共演を果たした。その他、ローラ・リニー(『ハドソン川の奇跡』『ラブ・アクチュアリー』)、サルマ・ハエック(『エターナルズ』『フリーダ』)ら実力派名優が脇を固める。映画の舞台となったのは、多くの人種が混在するニューヨーク、死者の魂を弔う厳かな行事を映像化したメキシコ、青々と美しく輝くギリシャの海……それらのどこか夢幻的な風景は、スクリーンを通して見る者に臨場感と感動を焼き付ける。
レオが往来する世界は、過去に“選ばなかったみち”、人生の岐路でもしも別の選択をしていたら、たどったであろう人生なのかもしれない。二手に分かれた道の一方を選ぶことの難しさは誰もが経験し、人生を振り返った時、あの時の選択は正しかったのであろうか、とふとした瞬間に立ち止まるものだ。サリー・ポッター監督は、レオの物語を通して、観客ひとりひとりに複雑で神秘的な“選ばなかった人生”に思いを馳せ、これからの人生に光を見出してほしいと語っている。