歴史の影に隠されていた石垣島への台湾移民たちの存在。東アジア過去80年の歴史の変遷を、その歴史に翻弄されながらも生き抜いてきた、ある一家の3世代にわたる軌跡を辿った珠玉のドキュメンタリー!
石垣島で暮らす玉木玉代おばあは、米寿のお祝いの日を迎えようとしていた。誕生会に集まる予定の親戚はその数、100名超。1930年代、日本統治下の台湾から石垣島へと移り住んだ彼女がこの歳を迎えるまで、第二次世界大戦・台湾解放・沖縄本土復帰と、東アジアは激動の時を歩んできた。台湾人とも日本人とも認められず、国籍をもたない移民として、絶えず不安に晒された彼女だけでなく、台湾移民2世として常にアイデンティティの問題に直面せねばならなかった子供たちの人生――玉代おばあの“最後の里帰り”を通じて、一筋縄ではいかない玉木家の歴史が紐解かれてゆく。
監督は数々のドキュメンタリー映画祭で受賞歴のある、若手実力派の黄インイク。台湾人である彼は、大学時代に沖縄の台湾移民について学んだことをきっかけに、2013年より沖縄でフィールドワークを始め、日本・沖縄・台湾を考えるドキュメンタリープロジェクト〈狂山之海〉3部作を構想。その第1部として本作を完成させ、現在は台湾人がかつて働かされていた西表島の炭坑を描いた第2部『緑の牢獄』を製作中である。
ナレーターには、本作の主人公である玉代おばあの孫にあたる、SEX MACHINGUNSのベーシスト・SHINGO☆こと玉木慎吾を起用。華やかな音楽活動のイメージとは異なる彼の朴訥な語りは、観る者の心に石垣の風を届けてくれる。