タイトルの『J005311』は、光ることなく浮遊していた二つの星が、奇跡とも呼ばれる確率で衝突し、再び輝き出した星をもとに名づけられた。神崎演じる新人俳優・野村一瑛と、今回初監督に挑みながら山本を演じた河野宏紀の限られたセリフと声にならない掛け合いがスクリーンいっぱいに共鳴する。生きづらさを抱えた己を投影し作り上げた本作は、居場所を見つけられず彷徨い、世間にお取り残された孤独感を痛々しく描き切り、第44回ぴあフィルムフェスティバルで満場一致のグランプリを受賞した。その後、開催された東京国際映画祭でも上映され、大きな話題を呼んだ本作がいよいよ劇場公開となる。
●人間、もがいて苦しんで、やっと一筋の光が見える。この世は絶望だけではない。 ーオダギリジョー(俳優)
●カメラ前に立ちながら、その人物として生きる。自身もそうありたいと願いながらお芝居に向き合っているのですが、今作のお二人はそう言う「生きた人」にしか見えませんでした。ー 東出昌大(俳優)
●抑制の効いた演出と演技の中に彼らの俳優としての気骨を感じました。凍えるような寒さをくぐった人は、人の持つニュアンスに鋭敏で優しい。冬空の下で、ひとつの、確かな温かさをもらいました。 ー加瀬亮(俳優)
●映画を命がけで撮っていた、映画に人生の全てを捧げた青山真治の横にいた者として、映画とは”マジ”、つまり本気を感じられる作品が心に響くと思っている。この映画で長回しに挑戦し、音楽にも頼らず、”一生懸命つくる”という”マジ”を見せてくれてありがとうございます。 ーとよた真帆(俳優)
●河野くんと初めて出会った時彼の尋常ではないストイックさと、それに相反する優しい眼差し、静かに燃える青い炎のようなエネルギーに圧倒されました。そしてそれは確かにここに存在していました。彼らは確かにここにいました。孤独に手を差し伸べてくれました。息をすることも忘れ、新たに自分の呼吸を感じた時、あぁ生きているのだと、物凄い映画体験をしました。本当に素晴らしかったです。 ー趣里(女優)
●この作品には嫉妬しかない。主人公ふたりの心の欠損が、互いに享受されたとき、リハを重ねたであろうが、これは奇跡だと想った。決め科白もなく、身体表現があまりに美しく、監督の視座に感銘しかなかった。なによりも俳優が素晴らしい。傑作です。 ー阪本順治(映画監督)『冬薔薇』『せかいのきおく』
●そうか、ここに至らせるための長い長い90分だったのか、と納得し、若い主人公二人の、ぬかるんだ雪道のような寂しさを味わいました。普通ならば対話や台詞が救うはずの場面で、それらが全く役に立たないことをつきつけられるのも新鮮でした。 ー西川美和(映画監督)『永い言い訳』『すばらしき世界』
●この作品を生まないと次に進めないという作品が監督にはあると思う。『J005311』こそが、そんな魂の映画だった。人間に絶対的に寄り添うという優しさが溢れており、あるカットでパンした瞬間、私はこの世界に生きていてよかったと思った。光を失った二つの星が奇跡と言われる確率で衝突し、再び光を放った。河野監督と主演の野村一瑛の出会いが生んだ奇跡のような”優しさで打ち負かす映画”。―三島有紀子(映画監督)『幼な子われらに生まれ』『Red』
●これはフィクションでありドキュメントだ。主演の二人が纏う本物の息苦しさ、行き場のなさに、何度も心をかき乱された。クライマックスに訪れる、とある強烈なショット。このショットは一生忘れられないと思う。
ー 上田慎一郎(映画監督)『カメラを止めるな』
●「それでも生きろ」と誰かに腕を掴んでほしいとき、きっとこの映画は灯台になる。冬の冷たさへ震えることもできない男たちが命を燃やして宿した”本当”は、絶対の光を放って私たちの心を貫いてみせる。二人の目に互いが映っているということがこれほどまでに切実で真実である映画が存在するなら、生きていくことを信じてみてもいいと思えた。 ー工藤梨穂(映画監督)『裸足で鳴らしてみせろ』『オーファンズ・ブルース』