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本編

赤い殺意

赤い殺意

  • 150分 
  • 3日間 330 pt 〜

強盗が押入った夜、夫の吏一と息子の勝は留守だった。強盗は、恐怖と殴打でなかば気を失いかけている貞子をスタンドのコードで縛りあげると、わがもの顔に家中を荒し廻った。貞子の露わな乳房にはコードが深くくい込み、太ももは白くはだけた。貞子の呻きに鋭い眼を向けた強盗は、これを見て欲情した。ぐったりとなっている貞子の肉体は、次の瞬間、獣のような強盗の下敷きとなって...。 明け方強盗は、ふたたび貞子を犯してやっと去った。風呂場で水をかぶりながら、真子は「死なねば...」と思いつめた。庭で汚れた下着を燃やすと、裏の土堤上を通る鉄路へふらふらと出ていった。しかし、貞子を投身自殺から救ったのは子供だった。勝に一目あい、それから夫に打明けて死のうと考えたのである。 本家から勝が帰ってきたとき、貞子はカ一ぱいわが子を抱きしめた。涙はとめどなく流れて落ちた。姑の忠江は、これを自分へのあてつけと邪推して顔を険しくするのだった。 夫の吏一は翌日、出張から帰ってきた。貞子は何度か、この”災難”を夫に打明けようとした。しかし、どうしても出来なかった。そんな妻の、ふだんと違った素振りにも気づかずに、吏一は貼り替えられた襖や短くなったコードをみつけてガミガミ怒鳴った。 吏一は、毎日家計簿を調べるほどの吝嗇な男である。しかし一方では、勤務先の東北大学図書館の事務員・義子と五年前から肉体関係を結んでいるような多情な男でもあった。 強盗がふたたび高橋家に現われたのはその二日後の夜で、吏一が義子のアパートに行って不在のときだった。抵抗する貞子を組み伏せて首を締めた強盗は、急に弱々しい表情をみせると、哀願しながら身体を求めた。「たのむ...俺、もう直き死ぬんだ。あんたに優しくして貰いてェんだョ…」そういいながら、強盗は嫌がる貞子を犯した。 その夜遅く吏一が帰宅すると、貞子は全てを打明けようとした。ところが丁度そのとき、隣家の妾の久子と旦那が猛烈な痴話喧嘩をはじめ、その騒ぎのために打明ける機会を失ってしまった。しかも、痴話喧嘩に刺戟されたのか、この夜の吏一は荒々しく貞子の身体を求めた。貞子は吏一に抱かれながら「あんなことは言えない。もし話したら、何もかも駄目になってしまう。……でも、もしあいつがまた来たら...」と心の中でつぶやきながら、強盗が畳の上に落していった泥をしっかり掌の中に握り隠した。 貞子のその怖れは現実となった。1年が明けた一月のある日のこと、勝を連れてデパートへ出かけた貞子は、突然強盗から声をかけられた。貞子は逃げるようにして家へ帰ったが、たまたまデパートに来ていた義子にそれを見られたのである。 義子からデパートの件を聞いた吏一は、半信半疑だった。帰宅すると、隣家に下宿している学生の英二が来ていた。編物機の操作を貞子に教えていただけだったが吏一は英二を怒鳴り帰した。 強盗がまたまた貞子の前に現われたのは二月のはじめ、妊娠の徴候に気づいた真子が、松島の婦人科医院へ行った帰途である。強盗が仙台からずっと尾行していたと知って、貞子はその執拗さに慄然とした。 「腹の子は俺のだろう」強盗はそういうと、いやがる貞子を走る列車のデッキで抑えつけて接吻した。がその直後、強盗はどうしたのか急に苦しみ出した。もがきながら、ポケットからアンプルを出して嗅いでいる異様な姿をみて、貞子は茫然とした。 貞子は温泉マークに連れ込まれた。強盗のいうなりになったのは、話をつけるためだった。しかし、男は貞子の話に耳をかす間も惜しげに、むさぼるようにして貞子の肉体を抱いた。男の激しい愛撫に、貞子はいつしか陶酔していた。心で嫌悪しながら、肉体は別の生きもののように悦楽にひたっていたのである。 吏一の父・清三が死んだ。その葬儀のために本家へ行った貞子は、たまたま町役場で、自分の産んだ勝が清三の子になっているのを知って驚いた。 貞子の祖母は先代の妾で、母はカフェの女給だった。貞子が十二才のとき母は死んだ。そのときから本家にひきとられた貞子は、二十一才の春に十才も年上の吏一と結婚したのだが、妾腹だという理由で入籍されなかったのである。しかし、戸籍上とはいえ、自分の子が夫の弟になっているという現実に、貞子は愕然とした。 数日後、強盗から呼び出しがかかった。貞子が応じないでいると、夜中になって強盗が屋根に小石を投げて合図してきた。飛び出した吏一は、相手がてっきり英二と思いこみ、嫉妬にからまれて隣家に踏みこんだ。 夫に疑われ、追いつめられた貞子は、思いあまって強盗に会いに行った。強盗は平岡といい、場末のストリップ劇場でトランペットを吹いていた。平岡は心蔵を病み、その薬代欲しさから強盗に入ったのだった。貞子は編物の内職で貯めた金を差し出し、もう絶対に来ないでくれ、と頼んだ。平岡は悲しそうな顔を作るとそれを押し返した。「嫌だ。俺はもう直き死ぬんだ。あんた以外、世界中になにもねえんだよ」必死の表情で哀願する平岡に貞子は負けた。夢遊病者のように貞子は平岡に従って温泉マークに入っていった……。 主任に昇格した吏一が一週間の予定で東京へ出張したとき、貞子の心にこっぜんと殺意が湧いた。平岡を殺して自分も死のう、これが貞子の考えついた知恵である。「なして私ってこんなに不幸なのかしら……」農薬をジュースに混入しながら、貞子は涙を流した。

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