誘惑

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誘惑

“誘惑”は朝日新聞夕刊に連載され、好評を博した伊膝原原作の映画化で、アバンゲールもアプレゲールもウエット族もドライ族も、“酒は涙か,から“バナナボート"まで世も変り、気質も変れども…

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本編

誘惑

誘惑

  • 91分 
  • 3日間 330 pt 〜

ニューファッションのモードも、恋のモードも、銀座のお家芸、カリプソのリズムに乗ってバナナボートソングの流れている銀座は、かつては「酒は涙か溜息か。の懐しいメロディーが流れていた銀座でもある。一人娘の秀子とやもめ暮らしの杉本省吉は、その銀座の一洋品店主だが、純情故に接吻もできずに失った初恋の甘く、せつない想い出に生きる大正気質なロマンスグレーのオジサマ族である。彼は美校を出たが絵を描くよりも商売の方が得手と自覚して、洋品店主の娘優子と結婚したのだが......。秀子は前衛派生花に腕をふるい、芸術は金なり、人生はセックスなり。と割り切っている超現代派の娘だが無軌道なアプレではなく、すべてを合理的に、そのうえ独りぼっちの父親省吉に母親代りの気のくばりようも見せるのだった。 そんな省吉は果し得なかった絵画の夢を実現しようと洋品店の二階を改築中であるが、秀子は早速この画廊に眼をつけて、自分たちグループの作品展を開こうと計画するのだった。この洋品店には竹山順子というおすましやの女店員がいる。彼女は二十七才になるまでお化粧をしたことがない、無愛想な女で、そのくせお色気は人一倍、マスター省吉のやさしい態度を誤解して、いつプロポーズされるかと心中自惚れきっている。 そんな或る日、秀は"お化生花"帰り、伝統派生花を習っている園谷コト子女史に言葉をかけられた。女史は未亡人でグラマー気質の生命保険の勧誘員である。そのお色気戦術は涙もろさも加わって定評のあるところ。先ず秀子に近づき、省吉を勧誘しようというコト子の魂胆なのである。やもめ暮らしでオセンチな省吉にしてみれば、保険の勧誘が本物の誘惑になりかねない。日が経つにつれ省吉とコト子女史のランデブーが頻ばんとなり、危険な関係に花展してゆきそうになると、順子も黙っているわけにゆかないのだが......。強気な彼女は、なにさあんな女! と内心ヤキモキするばかりである。 その頃、秀子のお化け生花グループは、作品展の資金をかきあつまるべく、絵画のレインボー・グループとタイアップすることになった。お化け生花グループには、伝統派の生花師匠・土方竜の御曹子笛吉を筆頭に、得太郎、典子、トミ子、英吉といったメンバーが怪しげな顔を揃え、一方、レインボー・グループは、ハンサム画学生松山小平、貧乏画伯田所草平と池上恭二らの若い絵かき青年たち。小平は絵を描くより商売の方が巧い、一風変った画学生で、この作品展の計画でも最も慎重派なのが彼であった。 そんな小平は完成した画廊を下見に来て、コピッドク画廊をけなしたうえ、借料まで値切る仕末。これには多少秀子もムット来たが、だんだん話しているうちに小平と意気投合して、お互にモヤモヤして来るのだった。そんな秀子に気のある笛吉はこの二人を紹介したことを、今になって後悔しはじめるのだった。 その頃、コト子が再三省吉を訪ねて来て、差向いで挑園で話合うのを見せつけられた順子は、ヒステリー気味で、お客の応待も粗雑になって客足も減る一方。或る日、そこへシラミと同居の貧乏画伯草平が、ひょっこり秀子と小平と杉本洋品店に訪ねてやって来た。草平は一名暴力画伯とも呼ばれ、決してアルバイトの看板書き等やらず、むしろニコョンでもやる逞しい男、金がなくなれば、迷惑を省みず、他人の家に居候をきめるという天才気質の男である。ところで草平を見た順子は、彼に一言「神は君に美しい顔を与え給うた、化粧をしたまえ。と云われ、ウムを云わさず預けられたトランクを手提げてただ呆然とするばかり。草平の言葉は神のお告げにも似て彼女の心はこの一言にシビレて、シラミ男の草平にゾッコン惚れ込んでしまった。しかし預けられたシラミだらけのトランクを、下宿先に持ち込んで、した事もない洗濯まで始めると云った熱の入れ方。 一方、作品展の資金の折合いで、レインボーグループとお化けグループとはうまくゆかず、秀子の顔は丸つぶれ、これにはさすがの勝気娘も、子供のように泣き出し乍ら、裏手の神社の境内に馳け込んだ。これを追って来たのが小平、小平は胸に泣きつく秀子を慰め乍ら、日頃の思いをこめて接吻しようとしたが失敗...。省吉は秀子をとりまくグループが、お化け花にベレー帽とロクなフレンドしかいないと想込んでいるから独りで気を揉み、画廊完成を記念して開こうと懸案中のパーティーには、娘にふさわしい青年を呼びたいと考えている。 そして早速知人を訪ねて、それらしき青年を探し出して来た。戸越と安井両青年が、そのお目にかなった青年。一方秀子もなかなかの父想いで省吉の嫁探しを、生花師匠土方竜に頼んでいた。パーティーの当日、省吉は秀子が、戸越と安井両青年を省みず、もっぱら小平とばかり踊るのにいよいよ頭が痛い。 順子は順子で意中の人草平を誘って、胸に寄り添いシラミも何のその夢心地......。 パーティーが終りかけた頃、省吉の昔友達である、一流画伯の西郷赤児、山本次郎等が現われ、それと時を同じくし、レインボーグループがこの画廊に絵を持ち込んだ。人々は始めは単に好奇の目をその絵に向けていたが、やがて草平が小脇にかかえて持って来た絵に一斉目を輝かした。 草平の絵は大反響を呼び彼は皆に祝福され、順子は目に涙を浮べて喜ぶのだった。一人の天才を生んだこの作品展は、連日盛況を極め、新聞は草平と順子の奇妙なロマンス迄書きたてた。その上小平の商オは草平の絵を一点十五万円迄、つりあげることに成功した。しかし草平は、この大騒ぎもどこ吹く風と此の画廊から姿を消して行方知らず。順子ほつれない方と悲しんだが、翌日ひょっこり順子の下宿先に草平は姿を現わし、今や自分が金持ちになったことも知らず、順子に百円の金を借りに来たのだった。

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