2019 年5 月、朝日新聞「男のひといき」欄に一つのエッセイが投稿された。エッセイのタイトルは「感謝離(カンシャリ)ずっと夫婦」。同年3月に62年連れ添った愛妻を亡くした河崎啓一(当時89歳)が悲しみに打ちひしがれる中、妻への思いを綴ったエッセイは読者の心に深く染み渡り、大きな反響を呼んだ。ラジオやテレビでも取り上げられ、このエッセイを読み「涙した」と呟いた女性のツイッターは10 万件以上リツイートされている。投稿のタイトルにある“感謝離(カンシャリ)”という言葉は、《愛する人が遺していったものに感謝の思いを込めながら整理していくこと》を意味しており、河崎自身から自然に出てきた表現だ。このような思いに至るまでの河崎自身を書いた『感謝離(カンシャリ)ずっと一緒に』が今年2020 年3 月に単行本化され、共感の声が続々と届いている。妻に先立たれ、遺品を前に立ち止まっていた著者の河崎だったが、そのひとつひとつを手に取り、妻との愛おしい日々を思い出し、その出会いや奇跡に感謝をしながら、『さようなら。ありがとう。』と手放していくことで、愛する人との別れを乗り越え、前へ進もうと思えるようになる。『長年寄り添ったパートナー“だった”、と考えたのは誤りだった。二人の間に終止符は存在しない、これからもずっと一緒だ。』そう言って、晴れやかな気持ちで前を向く姿、愛妻への想いが溢れる感動の実話が、映画化。