「そばにいる人を、めちゃくちゃに愛したいと、ときどき思う。」
松居大悟監督が情感豊かに等身大の愛を描く、「ROMAN PORNO NOW」第1弾作品
第34回東京国際映画祭で『ちょっと思い出しただけ』(22)が観客賞/スペシャル・メンションをW受賞した松居大悟監督。今最も注目される松居が、山崎ナオコーラの小説「手」(『お父さん大好き』文春文庫)を原作に、初めて挑んだロマンポルノで恋愛のひとときを映し出す。
主演は、『彼女はひとり』(21)で、第13回田辺・弁慶映画祭で俳優賞を受賞した福永朱梨。年上男性とばかり付き合ってきた主人公・さわ子の機微を豊かな感性で演じる。共演には、大河ドラマ「鎌倉殿の13人」(NHK/22)や「魔法のリノベ」(KTV・CX/22)と出演作が続く金子大地が、ちょっとダサくて憎めないキャラクターを巧みに演じた。初共演の福永と金子が、20代のリアルな男女の距離感を自然体で瑞々しく表現している。
日本映画界を支える俳優が総出演した『バイプレイヤーズ』(17~21)シリーズを監督した松居ならではの視点で、主人公の心を揺り動かしていく<おじさん>に津田寛治、金田明夫らを配し、本作に必要不可欠な愛くるしいおじさん達も魅力たっぷりに描いている。さらに、印象的に切り取られた都心から離れた郊外の街などの風景が、登場人物たちの心の機敏を鮮明に投影する。
20代の男女を中心に、おじさん、家族、父と娘…移ろいゆく時の中で、さらさらと変化しつづける関係性。“ROMAN PORNO NOW”に相応しい珠玉のラブストーリーが誕生した。
企画の始まりは、結城プロデューサーが、自分のようにロマンポルノを知らない世代にも観てもらえる作品にしたい――という意図から「同世代の心の揺らぎ、恋愛、年上男性や家族との絶妙な距離感」が描かれていることに共感した山崎ナオコーラの小説『手』に出会ったところから映画化が始動。
そして、ゴジゲンの舞台や映画作品で描かれる、いとしくも沁みる人間たちの姿に感動し、松居監督に「新しいロマンポルノをつくりたい」と本企画を提案した。脚本には、『私たちのハァハァ』(15)で松居と初タッグを組み、女性の心情を繊細かつ生き生きと描く作家・舘そらみが参加。原作が持つ登場人物たちの魅力を大切にしながら、映画ならではの広がりを持たせる作業が行われていった。また、本企画に欠かせないベッドシーンを、人と人とのコミュニケーションの手段として丁寧に描くことで、衝動性や憂いを同居させながらも、生活の延長線上にあるものとして物語の世界観へと落とし込んでいった。
2021年12月下旬にクランクイン。かつてのロマンポルノとほぼ同じ日数となる8日間での撮影期間。