1980年代後半、ベトナム中南部の貧しい村に生きる、兄弟と幼馴染みの少女との淡い初恋を描いたベトナムの人気作家グエン・ニャット・アインのベストセラー小説を原作に、新世代監督、ヴィクター・ヴーが詩情豊かに映画化。
緑豊かなフーイエン省の自然を背景に、思春期の悩みや嫉妬、別れの痛み…少年から大人になる瞬間を詩情あふれる映像で表現した、輝きと郷愁に満ちた物語。ハリウッド映画がスクリーンの大半を占めるベトナムにおいて、興行的・批評的大成功をおさめ社会現象となった本作は、第89回アカデミー賞外国語映画部門にベトナム映画代表として出品された他、トロント国際児童映画祭など海外映画祭でも数多くの賞を受賞した。
監督のヴィクター・ヴーは、アメリカで生まれ育ち、ハリウッドで映画を学んだ後に祖国へ戻り、若くしてヒットメーカーとなった新鋭。トラン・アン・ユン監督以来の逸材として期待される監督のひとり。主役の子供たちは、すでに多くのキャリアを持つ有名子役だったが、本作でその人気が爆発。卓越した表現力で、観る者の感情を揺さぶる。特にムーン役の少女、タイン・ミー
は、撮影時9歳にして国内で最も優れた俳優のひとりと言われ、ベトナムの芦田愛菜的存在として愛されている。誰もが心の中にある、子供時代の切ない思い出。そんな心の痛みを想起させる、永遠に残る宝物のような作品。