ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーベンに恋した人々の物語
ヨハン・セバスティアン・バッハは次のような言葉を残した。「音楽だけが世界語であり、翻訳される必要がない。魂が魂に話しかけるのだ。」確かに、音楽は、人が作り出したあらゆる境界線を越えて広く伝わる。しかし、少なからず一般の人はクラシック音楽に「壁」を持つ。その壁のイメージは重く、固く、退屈で好きな人だけが楽しむもの。ましてや、クラシックの舞台に立つなんて想像もできない。ところが、その厚い壁をぶち破って普通の人による、普通の人のための、とんでもないクラシック音楽が生まれた。それが「第九」だ。産みの親はもちろん楽聖ベートーベン、苦心のはてに生み出したそうだ。育ての親は普通の人々、彼らの苦楽がじっくり染み込んで育つそうだ。言うまでもなく、普通の人の普通の生きざまは「山あり谷あり平地あり」。その中に平穏な物語はなかなか見当たらない。そんな人達が寄り集い歌を唱えると、それぞれに抱える物語が交わりながら、息を呑むほどの「美しいイメージ」を織り成す。その姿を鮮やかに見せてくれるのが「第九市民合唱団」である。合唱… それは、歓喜に満ちた生命の鼓動。今、彼らの歌声が世界を鼓舞する。