人生百年時代が到来した昨今、自らの死を見つめる“終活”へのイメージも大きく変化した。終活イベントや終活関連本、エンディングノートの存在も年々大きなものとなり、「死に支度」というネガティブな響きをはらむ“終活”は、「人生整理」というポジティブな印象に様変わりした。生きているうちに人生の整理を行うことで、新たな気持ちで残りの人生を明るく謳歌することが大切だ。
『お終活 熟春!人生、百年時代の過ごし方』は、そんな“お終活”を通して人生整理に動き出す家族をコミカルに描く、笑って、泣けて、役に立つヒューマンコメディだ。結婚50年、倦怠期すら通り過ぎた大原真一と千賀子の熟年夫婦は、終活の捉え方でも大きく対立。そこに独身の娘と異色の経歴を持つ葬儀社の青年との淡い恋模様も加わって……さあ大変! 果たしてこの熟年夫婦に「熟春=熟年の青春」は訪れるのか!? 死を見つめることは、転じて生き方を見つめること。親子二世代の視点を通して、理想の“お終活”のありようを探る。
大原夫婦に“お終活”を意識させる葬儀社の青年・菅野涼太を演じるのは、名古屋発のエンターテイメント集団BOYS AND MENのリーダーで俳優としても活躍目覚ましい水野勝。実直な好青年像を形成する一方で、母の死をめぐって確執を抱く父親との複雑な関係性を繊細に表現。
ひょんなんことから涼太と出会い、両親の“お終活”の懸け橋になる大原家の長女・亜矢には、剛力彩芽。仕事優先の30歳女子という凛とした一面と、冷え切った両親の仲を取り持つ親思いの娘らしさを背伸びすることなくピュアに表現した。また松下由樹が涼太に葬儀社のイロハだけでなく心も説く一級葬祭ディレクターの上司・桃井梓に扮し、役柄としても女優としても後輩・水野をサポートする。
涼太をきっかけに「熟春」に目覚める大原真一&千賀子の熟年夫婦に扮するのは、山田洋次監督作『家族はつらいよ』シリーズ(16~18)でお馴染みの橋爪功。舞台、映画、ドラマからバラエティーまで幅広く活動する高畑淳子。結婚50年という金婚夫婦の人生の積み重ねを感じさせるセリフの応酬は見所で、長い時間を共有した夫婦ならではのやり取りにユーモアとペーソスを忍ばせる阿吽のアンサンブルは円熟の領域だ。
脇を固める面々にも実力派が勢揃い。真一の麻雀仲間に石丸謙二郎、大和田伸也、金田明夫。千賀子のコーラス仲間に藤吉久美子、大島さと子、増子倭文江。疎遠となった涼太の父を西村まさ彦、人生を謳歌する真一の旧友を石橋蓮司、亜矢の兄を袴田吉彦、その妻を小林綾子、そして娘役には映画『万引き家族』(18)で注目された天才子役・佐々木みゆを配している。
人生百年時代を迎え、仕事や子育てが一段落したシニア世代に送る、Let’s定年後夫婦の楽しい過ごし方。熟年夫婦の悲喜こもごもに「あるある!」と笑って泣いた後には、愛する伴侶の顔がじんわり心に灯るかも!? ハートフルな人生整理の物語を、ぜひご賞味ください。