父と娘の歌

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父と娘の歌

これは吉永小百合、浜田光夫、宇野重吉のトリオに贈る美しい愛情物語、日活が芸術祭参加作品として世に問う感動の起大作である。 ビアニストを目指す娘、病身の父ーーかばいあい、はげましあっ…

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本編

父と娘の歌

父と娘の歌

  • 91分 
  • 3日間 330 pt 〜

高名なピアニスト江戸基次がヨーロッパから帰国した日、卓紘子は阿川に連れられて羽田空港まで江戸に会いにいった。音楽担当記者である阿川は杏子を江戸に紹介し、うまくいったら江戸門下に弟子入りさせようとしたのだったが、この計画は江戸のあまりの多忙に邪魔されて失敗におわってしまった。 来春、音楽大学ピアノ科に入学を目指す椅子は、自分の家にピアノがないので、毎日アルバイトのひまをみては高校の先輩である阿川の家にいってピアノを弾かせてもらっていた。阿川は紘子が好きだったし、なによりも彼女の努力に敬服していた。それで紘子の才能をなんとかしてのばしてやりたいと考えていのだった。 紘子の父道一はかって交響楽団のクラリネット奏者だったが、いまでは米軍キャンプ相手の小さな楽団の一員におちぶれてしまっていた。そのうえ最近心臓を悪くし、医者からとうとうクラリネットの演奏を禁止されてしまった。 道一は仕方なく楽団をやめた。しかし、紘子には一言もしゃべらず、毎朝出勤するようにみせかけていた。紘子が音楽大学に入ることは彼のただ一つの夢であり、また亡き妻の望みでもあった。ここで紘子の気持をくじきたくなかったのである。 父の病気も知らず、杏子は音楽大学の入学金をためるためにせっせとアルバイトをした。デパートの売り子のあとはベビーシッターを自分で考え出し、高校の放課後に近くの団地にいって子守りをしたが、それもなるだけピアノのある家をねらうという徹底ぶり。その猛勉強の甲斐あってやがて阿川の尽力で、一週に一度江戸基次の家でレッスンを受けることができるようになった。 だが、その嬉しさも束の間、立川キャンプまで出かけていった紘子は、道一の同僚の吉行から父がとっくの昔に楽団をやめて工場づとめをしていることを聞いて愕然とした。その夜帰ってきた道一は卒直に娘にあやまった。裏切られた悲しみにふさいでいた紘子も、父の本心を知り、その薬が慈子を思えばこその苦しい努力だったとわかった。「下手な芝居をしちゃったな、毎日ク ラリネットさげてでかけて」「とても上手だったわ、私、いままですっかり欺されてたんですもの」そういって笑う父と娘の間には、ほのぼのとした情愛が立ちこめていた。 紘子は翌日すぐ心臓外科で有名な大学病院へいき、治療にはドイツの新薬の注射が一番いいことをたしかめた。だが月に八千円もする高価な薬を買うのは、父のいまの働きでは無理だった。かといって道一は娘の援助をやすやすと受ける人ではなかった。そこで一計を案じた紘子は母の形見の指輪を質に入れ、それにアルバイトでためた五千円たして、吉行の手からパンド・マン全員の好意というかたちで父に渡してもらった。 入学資金を父の治療費にまわしてしまった松子は、一時は入学を断念しかかったが、吉行にはげまされてナイト・クラブでジャズを弾くようになった。自然、学校も江戸のレッスンもおろそかになり、道一や阿川を心配させることになった。レッスン中に江戸から練習不足を鋭くつかれ、「安易な気持ならビアノを止める」とまでいわれたとき、はじめて紘子の自信はぐらついた。 だが、紘子は開をくいしばって頑張った。阿川の強いはげましと、そして幼い日に母がいった「世界一のピアニストになるのよ」という言葉を胸にー。 翌年の春、杏子は入学試験にパス、音楽大学ピアノ科に入った。しかし相変らずアルバイトはつづけなければならなかった。 授業、レッスン、それに二つのアルバイト。紘子のきびしい生活ぶりは、女子寮という団体生活には無理があった。同じ部屋の曾野や三浦は、紘子が自分のことしか考えないといって非難するようになったが、声楽科の山口だけは紘子の立ち場をよく理解してくれた。 そのうちに紘子にまたとないチャンスがめぐってきた。毎朝新聞主催のコンクールで杏子は決選にすすみ、ショパンの「幻想ポロネーズ」を立派に弾きこなしてみごと俊勝したのである。俊勝の報せに阿川も吉行る飛びあがって喜んだ。が、道一はなぜか考え込んでしまうのだった。 翌日、道一は江戸を訪ねた。そして、自分の秘密を江戸に告白した。道一ほ江戸の先輩で、かっては国際交響楽団の団買だったが、盗難事件で濡れぎぬを着せられ、それがもとで檜舞台を去ることになったのだった。しかしまだ犯人の汚名は残っていた。その道一の汚名が、もし娘の紘子の将来を傷つけでもしたらーー。そう道一は心配してのだった。恥をしのんで娘のことを心配する父親の裸の姿に江戸は心を打たれた。 紘子は新春に東洋フィルでピアノ・コンチェルトを弾くことに決まった。クリスマス・パーティーで梁のみんなが楽しんでいる間紘子は惜しんで練習にはげんだ。紘子にとってはじめての檜舞台、人生の門出の日のためにーー。だが、ある朝、紘子は重大な過失を犯してしまった。寒さで手がすべって左小指をピアノの蓋にはさんでしまったのだ。レントゲン検査の結果、指にはヒビが入っていた。 練習も、アルバイトもできず、授業料は滞納し、演奏会の期日も迫って、紘子が焦燥と不安のどん底におちこんでいたころ、阿川は紘子を毎日のように勇気づけ、アルバイトに写譜の仕事を持ってきてくれた。そのおかげでどうやら授業科目納められ、指の傷も回復して、紘子は次第に明るい表情を取り戻していった。 ふたたび紘子は猛練習に打ちこんだ。--そんなある日紘子が久しぶりに道一のアパートにいくと、押入れに紘子が写した楽譜が山と積まれていた。写譜のアルバイトは父の仕業だったのである。思わず粒子の顔に後笑みが、そして暖かい涙がこみあげてくるのだった。 やがて、東洋フィルハーモニー交響楽団の初練習の日、ピアノの前に坐った紘子は楽団員の中にクラリネットを持った父の姿を発見してびっくりした。

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