監督は幼少期養護施設で過ごし解体業から荒戸映画事務所に入り映画制作を続ける石井慎吾。自らの経験をもとに原案を務めた「ケンタとジュンとカヨちゃんの国」では閉塞感のある20代をリアルに描き出した。
本作でも同様に自らの実体験をもとに脚本を描きだし現代の自己肯定感のない若者を投影し昨今の小説や漫画原作をベースにした日本映画にない私小説ならぬ私映画というジャンルをこの映画で確立させた。
主演は嶺豪一が務める。多摩美術大学在学中に出演した「ニュータウンの青春」で役者としての開花し翌年監督、主演をした「故郷の詩」でぴあフィルムフェスティバル審査員特別賞を受賞しその後数々の作品に呼ばれ今後期待の俳優として注目されている。本作では主人公の孤独感を見事に演じる。その孤独感を包容力で包み込むとするヒロインの斎藤千晃。8才で降旗康男監督の目に留まり「赤い月」で映画初出演をはたす。本作では突然の別れ話から揺れ動く女性の心情を見事に演じきっている。この二人が織りなすリアルな関係性に観ているものは共感していくだろう。