その一滴は、やがて海となる。
監督・脚本・編集を務めたのは、本作が初の劇場公開作品となる山下大裕。地域を知ってから映画を撮りたいと一念発起し、2017年に鹿児島県南大隅町へ移住。同町地域おこし協力隊としての活動を経て、2019年に軽自動車で47都道府県を巡り、のべ200名を超える協力隊や自治体職員に取材を重ね脚本を執筆。自身の実体験と全国取材で得られた現場の声をもとに、多様な立場の本音をあたたかなまなざしで描く。俳優と地元住民が共演する本作では、台詞やふるまいににじむ自然な表情や感情が作品に唯一無二の空気を生み出している。
一滴の水が大海をすぐに変えることはない。だが、その“ひとしずく”が混ざることで確かに成分は変化する。そしてその後の変化を生み出すのは、日々の暮らしの中で流す汗と涙、すれ違いと理解、挑戦と失敗の積み重ねである。
本作は決して派手な映画ではないが、観終えたあとにそっと心に残るものがある。それがまた次の誰かへの“ひとしずく”として、静かな連鎖のきっかけになることを願っている。