「ろくでもない一生だったな」
無期懲役囚の老人・阿久津が独房で孤独な死を迎えようとしていたとき、声を掛けたのは、人の言葉を操るホウセンカだった。"会話"の中で、阿久津は自身の過去を振り返り始める。
「お前たちが来た日のこと、よく覚えてるぜ」
1987 年、夏。海沿いの街。しがないヤクザの阿久津は、兄貴分として慕う堤の世話で、6 歳年下の那奈と、ホウセンカが庭に咲く素朴なアパートで暮らし始めた。生まれたばかりの那奈の息子・健介も一緒だ。縁側からは、大きな打ち上げ花火が見える。3 人は、慎ましくも幸せな日々を送っていた。
「退路を絶ったもんだけに大逆転のチャンスが残されてんだよ」
やがて土地転がしのシノギに成功し羽振りがよくなった阿久津は、享楽的に過ごし家を顧みなくなる。
そんなある日、事態は一変する。阿久津は大金を工面しなければならなくなり、堤と共に組の金庫にある3億円の強奪を企てるのだった―。
ある 1 人の男の、人生と愛の物語。